1995年 劇場用映画 『ファザーファッカー』



監督:荒戸源次郎

製作の体制を固めるのと平行して監督、スタッフの人選も進んでいた。監督の人選は秋山、孫、菊地、沢田の4人で進められた。ベテラン、新人を問わず多くの監督候補の名前が上がった中で荒戸の名前が挙った。荒戸は映画製作者としては映画業界では知られた存在であったが、監督経験は無かった。しかし、秋山は荒戸に演劇での演出経験があるのを知っていたし、孫と菊地は荒戸がプロデューサーとしてプロデュースしてきた作品に企画、脚本、現場、編集と監督と共に深く関わってきた事を知っていた。当初は固辞し続けた荒戸もこのプロジェクトを面白く思い始め監督依頼を受ける事になった。スタッフの人選には監督、荒戸の意見を尊重しながら進められた。


オーディション

8月15日目黒ホリプロ大会議室。
一般公募4097人から書類選考を経た300人の少女たちが、早朝から緊迫した面持ちで集まった。2日間に渡る厳しい審査。14歳から17歳の少女たちは、今、確実にこのスキャンダラスな物語や主人公の境遇に深い共感を示している。
「見たとたん、そこに静子がいると思った」。荒戸監督の直感と審査員たちの選考結果が重なり合う。新女優・中村麻美が誕生した。


処女性

荒戸新監督のもと、集結した人々もまた「初めての経験」に胸を熱くしていた。昨日まで普通の高校生だった中村麻美。俳優本格デビューの秋山道男。35mm劇映画一本目の撮影の芦澤明子。斉藤英則は舞台美術から一転映画の世界に。コスチュームの掘越絹衣、ヘアメイクの田村哲也もファション最前線からの殴り込み。映画界に人材が不足しているわけではない。この映画を「清潔で新しい映画」にしたいという熱意が、こんな他業種のエキスパート達を引き寄せたのだ。映画という新しい船が処女航海に望む。