1998年 劇場用映画 『ポルノスター』
製作/配給:株式会社リトルモア
製作協力 :東京テアトル株式会社/フィルムメイカーズ株式会社
1998年 劇場公開作品/カラー/ヴィスタビジョンサイズ/98分
ポニーキャニオンよりビデオ、パイオニアLDCよりDVD発売中
INTORO
90′s TOKYO , SHIBUYAー.
全てがこの坂にかこまれた街の路上から始まった。ガキどもは大人たちの古臭い価値観や常識を破壊し尽くした。路上にたむろし、徘徊する無数の少年、少女、ヤクザ、チンピラ不良外人……。誰かが言った「あそこに行けば、何でも欲しいものが手に入るよ。金も、セックスも、ドラッグも、人の命も」。
欲望に飲み込まれながら様々な人々、世代が共存する街。そして今夜も誰かのフラストレーションが暴発し、すさまじい暴力が解き放たれ、路上は血まみれになり、誰かが姿を消し、変わって新しい星(スター)がどこからともなく現れる。ファッションが変わり、言葉が変わり、音楽が変わり、セックスが変わり、暴力が変わり、ドラッグが変わり、快楽が変わり、人生が変わり、時代が変わった。
もう誰も“SEX & DRUG & ROCK ‘ N ROLL”なんて言わない。そんなノスタルジックな言葉は、もう今のSHIBUYAには似合わない。この街は、ニューエイジのバビロン。闇が入り込むすき間もないほどに街灯で照らし出された眩しい光りの不夜城で、生きることに絶望し、実感し、それでもヤツらは未来に対して希望を持ち続ける。それが、たとえかなうことのない夢であっても。『ポルノスター』はそんな世紀末の象徴、渋谷を舞台にしたニューエイジのガキどもの黙示録である。そこにあるのは現実をも凌駕するヴァイオレンス刹那的な快楽に生きるガキどもの生き様。そして終末。
全てを破壊し尽くして新しい秩序を求めるアナーキーな主人公に、自らを投影しながらも、坂への頂上へは登り切ることの出来ない若者たちのドラマでもある。無気力に世の中に流されていく、大人たちへの怒りと反抗。理想郷は、はかない蜃気楼のように手が届きそうな所で消えてしまう。全てが消え去ってしまった時、初めて悪徳に満ちたガキどものバビロンは理想郷に変わるが、それはもう次のガキどもの破壊対象でしかない。
もし、あなたが、この90年代に東京で生きていたなら、SHIBUYAの街に魅かれたのであれば、この『ポルノスター』をロマンティックなストリート・ムービーとして実感できるはずだ。センチメンタリズムなど入り込む隙間もないリアリズム。SHIBUYAの街を徘徊してみればいい。あなたが、この街から逃れたければ、坂を登り切るしかないことに気付く。もし、坂の途中でくたばるなら、あなたは、90年代という時代に永遠に封印される。その悲劇的で、ロマンティックな終末を瑞々しい感性が失われないガキのうちに体験できるなら、それが今に生きる証になるだろう。世紀末、TOKYO、SHIBUYA、ポルノスター……。それは未来においても変わることのない時代の記憶。あのガキどもは、あなたにとって、救世主なのか?それとも堕天使なのか?そのことは分からない。