2005年 劇場用映画『空中庭園』


ストーリー概要


(家族のことは、好きですか?)

 この映画の舞台は、東京郊外。
ここで“ダンチ”とよばれるかつての巨大マンションに住む“普通”の家族の物語が始まります。
 いまもっとも現代的な舞台装置であるダンチにおいて、空虚が絶望という音をたてながら降り積もり続けているこの時代に、“家族”とは、“孤独”とは、“愛”とは、といった普遍的なテーマに真正面から挑戦していきます。

 小泉今日子演じる主婦・絵里子が固執する“家族の間で隠し事をつくらない”という家族のルール。このルールは彼女にとってのガーデニング、つまり絵里子の一方的な“思い込み”の象徴である“空中庭園”として機能します。
 母・さと子とのトラウマを抱える絵里子は、平和な家族を自分で作り、自分の手で守ろうと、まるで幻の“空中庭園”を目指すかのように理想の家庭を取り繕おうとしますが、やがてそれは強迫観念となって、絵里子を孤独へと追い込んでいくのです。

 映画は、家族がひとつ、またひとつとそのルールを破っていることを露見させ、絵里子が抱えるトラウマと現実に目を向けさせ、対峙させせることで、二重露出となっていた家族関係を剥き出しにしていきます。
不様で、ときに滑稽なほど不器用な家族たちが、あらためて気づく終幕。「繰り返せばいい。やり直せばいい」。

 壮絶なクライマックスの先には、原作とは一味違う、なんとも優しいラストシーンと最高の解放感が用意されています。